「これからの当たり前をつくる」
台東区初の住宅宿泊事業モデルに挑んだ原点
この物件の出発点は、「事業性」よりも “面白さ” でした。
当時はまだ、
- 住まいとホテルのあいだのような滞在スタイルは一般的ではなく、
- 住宅宿泊事業の制度もスタートしたばかり。
そんな中で私たちが提案したのは、
1階がホテル、2〜4階が住居(シェアハウス)という「くらすように旅する」滞在体験をつくるハイブリッド型施設。
観光とも賃貸とも違う “中間領域” をどう企画するか。7000万円規模の改修を伴う提案は決して保守的ではありませんが、「まだ誰もやっていないからこそ面白い」とオーナー様が背中を押してくれたことが、この挑戦の原動力でした。
課題解決だけでなく、 “新しい価値観をつくる企画” に共感いただけたプロジェクトでもあります。
駅近じゃないのに選ばれる宿
浅草の”奥”で仕掛けた滞在設計
本物件が位置するのは、浅草の観光エリアからやや離れた 奥浅草。下町の居住エリアで町工場も残る地域です。浅草駅から徒歩20分弱と、決して近い立地ではありません。
それでも Livmo が目指したのは、 “歩いてでも来たくなる宿” をつくること。
地域の空気を感じるファサード設計
ゲストが最初に目にする正面には、
- 大きな扉
- 土間
- 生きた竹
- 畳
などを配置し、日本文化と街の空気を感じられる仕掛けを用意。
「街にひらく」1階の設計
1階は鉄骨を活かした元工場の趣を残しつつ、扉を開けた瞬間に浅草の日常が広がる “開かれた客室” に。
この地域では、「1階で商い、2階を住まいにする」という生活文化が今も根強く、近所のお肉屋さんに行けば名前で呼ばれるような、顔の見える関係が残っています。その”日常の延長線”にゲストが自然に溶け込めるホテルをデザインしました。
1976年築の建物が持つ”昔からあるくらし”を体験へ変換
1976年築の建物が持つ素朴な魅力を体験してもらうため、 Livmoスタッフ自身が建物内に住み、日常の延長として宿を運営。 買い物帰りにゲストと挨拶を交わすような何気ない行動すら、滞在価値の一部として設計に取り込みました。
「当事者として原体験がある人」が関わることで、ゲストが”観光客”ではなく “この街にくらす人” として滞在できるホテルを実現。
台東区の”制度”を動かし、成果を出した先駆けへ
2018年、旅館業を伴う 1室運用の住宅宿泊事業 は台東区に前例がなく、地域の不安や慎重な声もありました。外国人観光客への懸念、地域ルールとの相性など課題が多い中、Livmo は開業前から地元住民と丁寧にコミュニケーションを重ね、
- ゴミ出しルールを教わる
- 日常的に挨拶を交わす
など、信頼を積み重ねていきました。
その結果——
- 開業直後から稼働率70%以上を維持
- 区内初の先駆事例としてメディア取材多数
建物自体はすでに解体されていますが、当時のオーナー様とは今も信頼関係が続いており、Livmoメンバーに新たな住まいをご紹介いただくなど、関係性はより深まっています。
ユーザーファーストな挑戦が”制度”を変えた
この物件の核にあったのは 「新しい価値観に挑戦する姿勢」 です。地域と向き合い、日常のルールを教わり、サービスの”顔”が見える運営をすることで、少しずつ地域に受け入れられ、やがて次の案件へとつながっていきました。
Asakusa1976 は、Livmo の “自分たちらしい挑戦” の原点 でもあります。メンバー一人ひとりが責任を持って地域に向き合い、制度を動かしながら、 新しい住まいのスタイルを実装する という、数字以上の価値を残したプロジェクトでした。
Livmoの”ソフトデベロップメント”の流れ
私たちは、物件の無形資産= 「くらしの体験価値(ソフト)」 を最大化するため、ソフトデベロップメントを重要視しています。これは、設備やリノベなどの ハードに頼るのではなく、入居者像・過ごし方・空気感といった “目に見えない価値” を起点に物件を再設計し、入居率・問い合わせ数の向上につなげる手法です。
▼ Livmoのソフトデベロップメントの流れ
- 入居者ターゲットの設定
- 当事者を交えたエリア調査・ヒアリング
- コンセプト設定と空間企画
- 間取り・導線・設備設計
- 募集・運営・イベント支援まで一貫伴走