立地も建物への評価も”難しい”と言われた物件に、あえて宿泊を提案
浅草の中でも観光エリアから少し外れた「観音裏」に建つ、元・浅草寺病院の職員寮。オーナー様は当初、将来性への不安から 「建て直し」 も検討しており、一度は活用方法が見出せず手放された建物でした。
その後、この建物に可能性を見出した投資家が取得し、Livmo とともに 「観音裏に泊まる理由をつくる」ホテル企画 をスタート。ホテル運用は想定されていなかった物件・立地にも関わらず、私たちは課題を逆手にとり、 “この場所だからできる宿泊体験” を設計する方向に舵を切りました。
収益性と場所の価値、両方を見据えたホテル運営プラン
当該物件を取得したのは、不動産会社を経営する現オーナー様。投資家として、
- 収益性
- 実現性
- 事業に必要なファクト
を重視される方でした。
Livmo はこれまでの運営実績をもとに、 取得後のホテル運営を前提とした事業計画 を提案。
立地の弱点を「理由づくり」に変換
浅草中心部からは少し離れているものの、その特性をマイナスに捉えず、 “そこにゲストが来たくなる理由” をつくる視点で企画。長期滞在者に必要な機能性・快適性を整えるだけでなく、地域との関係が自然に生まれる導線設計やコミュニティ構想など、ハードとソフトの両面から「この場所が選ばれる意味」を設計しました。
結果としてオーナー様にも、 「この場所だからこそ成立する運用プラン」 としてご納得いただくことができました。
観光ではなく”日常の浅草”を体験する、新しいホテルのかたち
ホテルが位置するのは、浅草寺の北側に広がる “観音裏”。正式な地名ではなく、地元で親しまれてきた呼び名です。観光客向けの華やかな表通りではなく、 地元の空気と文化を感じる滞在を届けること を目指しました。
デザインに「浅草の文化」を丁寧に落とし込む
- 玄関に飾った手拭い
- 三社祭のカラーをモチーフにした意匠
- 階ごとに変えたテーマカラー
浅草らしさをさりげなく織り込んだ内装設計とアイテム選定。
地元とゲストが自然につながる仕掛け
“観光地に泊まる”のではなく、 “地元のくらしに一歩入る宿” をテーマに、地域と共に導線を企画しました。
- パン屋さんが外国語で接客してくれる
- 一緒に銭湯文化を体験できる導線
- 着物で人力車を迎える体験プラン
浅草という街の”日常”にやさしく溶け込めるような仕組みを構築。
中長期滞在でも快適な構造
当時の浅草のホテルにはまだ少なかったランドリー設備を備え、各部屋にも個性を持たせ、 滞在するたびに新しい発見があるように デザインしました。
Asakusa1976 の続編として、「ここに泊まる理由」をハードとソフト両面から丁寧に仕立てた物件です。
“地域に根ざす宿”という思想を次のプロジェクトへ
運営期間はコロナ禍の2020〜2021年と短期間ではあったものの、海外からの帰国者やマンスリー利用など、 ニーズに応える機能価値が高く評価 されました。
物件は売却され現在は他社運営となりましたが、Livmo が大切にしてきた 「観光ではなく、日常に泊まる」 という思想は後続プロジェクトにも受け継がれています。
立地や規模に制約があっても、 “地元のくらしに溶け込む滞在体験” を企画し、地域の魅力とつなげることで宿の価値は引き出せる。その考え方が Asakusa KANNONURA には色濃く反映されていました。
Livmoの”ソフトデベロップメント”の流れ
私たちは、物件が持つ無形資産= 「くらしの体験価値(ソフト)」 を最大化する手法として、ソフトデベロップメントを重視しています。これは、設備・リノベーションなどのハードではなく、入居者像・過ごし方・空気感といった 目に見えない価値 を起点に再設計するアプローチです。
▼ Livmoのソフトデベロップメントの流れ
- 入居者ターゲットの設定
- 当事者を交えたエリア調査・ヒアリング
- コンセプト設定と空間企画
- 間取り・導線・設備設計
- 募集・運営・イベント支援まで一貫伴走